絵本をネタに親子の会話をば

「絵本の読み聞かせのコツ10選」的な他のサイトを観ていて気づいたこと。
読み聞かせた後の時間の使い方には、大きく2つの派閥があるようで、主張が真っ向から対立している。

「絵本を読んだ後は、子どもにあまり話しかけず、余韻に浸らせてあげてください。」
「絵本はコミュニケーションツール。絵本を使ってどんどん会話をしましょう。」
の2つ。

この二つの意見は、どちらも子どもの成長を考えてのものだろうが、見ての通りで真っ向から主張が対立している。もっとじっくり読んでみると、前者は日本発、後者は欧米発の考え方のようだ。

私は日本人だが、どちらかといえば「欧米派」。せっかく絵本を読んだのだから、それをきっかけに子どもと話をしたほうが楽しいし、子どもにとっても良いと思う。

なぜこのような違いが生まれたのか? そして、本当に「余韻に浸る」ほうがいいのか? この記事では、文化的な背景を整理しながら、「絵本を読んだ後の対話が楽しくて有意義である理由」を述べていきたい。


1. 日本と欧米の絵本の捉え方の違い

絵本の読み方に対する考え方は、その国の文化や教育観と密接に関係している。

① 日本では「物語を味わうもの」

日本では、絵本は「物語を味わうもの」という意識が強いのではなかろうか。絵本は、作品として完成された芸術であり、子どもにはその世界観をじっくり味わってほしいという考え方だ。これは日本の「察する文化」とも関連していると考えている。

・物語の余韻を楽しむことで、想像力や感受性が育つ
・「読み終わったら静かにする」ことで、子どもの心に深く残る
・大人も「読み聞かせはあくまで本の世界を届けるもの」と考える

この考え方が根付いているため、「読み終わったらあまり話しかけないほうがいい」という意見がよく聞かれるのだろう。

② 欧米では「会話を生み出すツール」

一方、欧米では「絵本は親子の対話のきっかけになるもの」と考えられている。物語を読むこと以上に、その物語について話し合うことが大切なのだ。

・子どもがどんなふうに感じたかを言葉にする機会を作る
・疑問や感想を話し合うことで、思考力や表現力が育つ
・親子のコミュニケーションが深まり、絵本をより楽しめる

たとえば、アメリカの親は、絵本を読み終わった後にこう質問することが多い。

「このキャラクターの気持ちはどうだったと思う?」
「もし君だったらどうする?」
「このお話は現実でも起こるかな?」

これは、子どもに考えさせ、表現させるための問いかけであり、単に「読んで終わり」ではないのが特徴だ。


2. 絵本を「余韻」より「会話」に使うほうが楽しい理由

私は欧米的なアプローチのほうが楽しく、メリットも多いと感じている。なぜなら、絵本を読んだ後の対話が、親子の関係をより豊かにするだろうし、子どもの言語能力や思考力を高めるきっかけにもなるだろうと考えているからだ。

① 子どもの理解が深まる

絵本を読んだだけでは、子どもがすべてを理解しているとは限らない。登場人物の気持ちやストーリーの展開を、一緒に話すことで「なるほど!」と納得することができる。

たとえば、『おしいれのぼうけん』のような少し怖い話を読んだとき、子どもが「怖かった……」と感じたままだと、その気持ちがモヤモヤしたままになるかもしれない。そこで、「どこが怖かった?」「ねずみばあさんは本当に怖い人なのかな?」と話をすれば、物語をより深く理解できる。

② 自分の気持ちを言葉にする力が育つ

「どう思った?」と聞くことで、子どもは自分の感情を言葉にする練習ができる。

最初は「面白かった」「楽しかった」と単純な答えしか出てこないかもしれない。しかし、続けていくうちに「○○がかわいかった」「このシーンが好きだった」と具体的な表現が増えていく。

これは「自分の気持ちを伝える力」を育てることにつながる。

③ 想像力が広がる

「もし君だったらどうする?」という質問をすると、子どもは物語の枠を超えて考え始める。

たとえば、『はらぺこあおむし』を読んだ後、「もし君があおむしだったら、何を食べたい?」と聞くと、「ケーキ!」とか「バナナ!」とか、自由な発想が出てくる。

この「想像を膨らませる遊び」が、創造力を育むきっかけになる。


3. では、日本流の「余韻に浸る」は意味がないのか?

もちろん、静かに余韻に浸ることにも意味はある。特に、詩的な絵本や情緒を味わうような作品では、読み終わったあとに「しばらく静かにする」ことで、子どもが物語を自分の中で消化する時間になる。

ただ、それが「毎回」になると、親子の会話の機会が失われてしまう。物語の内容や子どもの興味に合わせて、対話をするかどうかを柔軟に決めるのが良いのではないかと思う。


まとめ:「読んで終わり」にしないほうが楽しい

絵本の読み聞かせの後、「静かにする」のも一つの方法だが、私は「会話をする」ほうが断然楽しいし、子どもにとっても良いと考えている。

・日本では「余韻を大切にする」文化があるが、欧米では「対話が大事」という考え方が強い
・絵本を読んだ後に話をすることで、理解が深まり、表現力や想像力が育つ
・「毎回黙る」のではなく、物語の内容に応じて柔軟に対話を楽しむのがベスト

せっかく絵本を読むのだから、子どもと一緒にその世界について語り合いたい。
「読んで終わり」にせず、ぜひ「親子で一緒に考える時間」にしてみてほしい。

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